堅い食物と成長

野田 信行牧師

パウロはコリント教会の兄弟姉妹に対して、初めは「乳を飲ませて、堅い食物は与えませんでした」(Ⅰコリント3:2)。人間を含む哺乳類は幼い時は母親の乳を飲んで育ちますが、成長に連れて、離乳食、堅い食物へと変化して行きます。

なぜずっと乳だけを飲み続けないのでしょうか。もしその様なことになったとすると、必要とする乳の量は膨大となって母親の負担は大き過ぎます。また堅い食物を食べることによって色々な種類の栄養が取れるようになり、噛むことは顎を鍛えて、脳にも良い刺激を与え、胃腸は消化吸収力も鍛えられ、さらなる成長に繋がります。また堅い食物も食べることで、神が食べ物として与えてくださっている恵みを知ることが出来、食べる喜びも増えます。

その様に、私たちを「成長させて下さる神」(Ⅰコリント3:6,7)ですが、私たちの人生は順調な成長の続く春の様な季節だけではなくて、成長が止まったと思われる過酷な夏や冬の様な季節を過ごすことがあります。そして自分が過酷な季節を過ごしている時に、春の様に順調に過ごしている人を見ると羨ましく感じるものです。そして過酷な季節が無ければ良いのにとも思うものです。

確かに一年中、気候変動の少ない熱帯雨林に育つ植物は成長が早いようです。熱帯雨林では水も豊富ですので、根は地中深く潜る必要はありません。また一年中同じ様な季節で、ずっと育ち続けるために、夏の酷暑によって成長が止まるために出来る年輪もできません。

しかし土が乾く時がある地域に育つ植物は、水を求めて地中深くに根を伸ばし、また風の強い地域では風から守るためにしっかりと根を張ります。過酷な環境で成長が止まるために年輪の出来る地域では幹は強くなります。

私たちを成長させて下さる神は、私たちが強く、逞しく成長することを望まれ、多少の負荷では倒れないように、少し負荷の掛かる環境に生きることを許されておられるのではないでしょうか。昼夜の寒暖差の大きい地域は厳しいですが、そこに育つ農作物は糖度が高くなり美味しくなると言います。私たちが良い御霊の実を結ぶためには、多少の負荷も必要です。またその様な環境で生活することによって、厳しい環境に生活する人を思い遣る心も生まれて来ます。

しかし何よりも大切なことは、どんな環境でも御言の種を育てることです。どんな環境でも御言の種がなければ何も育たず、厳しい環境だけでは心が屈折するだけかも知れません。御言の種が成長して結ぶ実は、必ず御言の種が中に入っている、甘くて美味しい実です。

2020年5月号