うさぎはうさぎ、かばはかば

古川信一牧師

11月22日は「いい夫婦の日」です。

ある夫婦の会話です。妻が言いました。

「あれ。このズボン買ったの」。

「うん。あのジャケットと合うかなと思って」。

妻が思い出したように言いました。

「あの上着、ひじのところがちょっと気になるんだけど…」。

そのとき、夫の脳裏に、妻との共通の知人であり、とてもお世話になったある方(N牧師)の姿が浮かびました。N牧師がよく、革の肘あてのあるジャケットを着て、エネルギッシュに動きまわっておられたことが、思い起こされました。

「N先生が、肘のところだけ素材が違う上着を着ていたけど、…」。

そのイメージがすぐ浮かんだのか、妻が笑いながら言いました。

「そうそう、わたし、あれぐっとくる。なんか英国調って感じがしない?」。

「ええっ?あれちょっとかっこ悪いよ。

なんか、小学生じゃあるまいし、アップリケみたいで…僕は着たくないな」。

 その後、何回かやりとりがありましたが、要するに、妻はジェントルマンみたくて、かっこいいと思っているのに対し、夫は活発すぎる小学生が、肘を補強しているように感じられて、かっこ悪いと思っていて、夫婦であっても、一つのもの、同じことに対して、全く逆の見方、感じ方をすることがあるということです。

必ずしも自分が考えるように、人は考えないし、自分が感じているように、人は感じるわけではないということを、常に心に持ちながら、そのうえでお互いの存在を受け入れ合うことが、いかに大切であることでしょうか。

 お互いが違っているということで、私たちはしばしば、悩んだり、苦しんだりします。しかし、だからこそ、新しい視野を与えられたり、発見があったりするという面白さや豊かさもまた、生まれてくるのではないでしょうか。

 今教会で、クリスマスに向けて、みんなで合唱の練習を始めました。4つのパートに分かれているからこそ、それが調和することで、美しいハーモニーが生まれます。自分の音を出しながら、全体の音の響きを聞くことができたら、どんなに楽しいことでしょうか。みんな違って、みんないいのです。うさぎはうさぎ、かばはかばでいいのです。

もしあなたがたのうちふたりが、どんな願い事についても地上で心を合わせるなら、天にいますわたしの父はそれをかなえて下さるであろう。

– マタイ18章19節 –

2009年11月号