日の当たる部屋

古川信一牧師

 牧師館の窓越しに見上げる、冬晴れの空は、どこまでも青く、射し込んでくる太陽のぬくもりに包まれていると、あまりの心地よさに、まどろみの中に、引き込まれそうになります。

わたしが書斎としている部屋は、牧師館の中で最も日の当たる部屋です。省みれば、茂原教会へ遣わされて、初めて自分の部屋というものが与えられました。

 わたしの両親は、今から40年ほど前に、横浜から四国へと移りましたが、今暮らしている住まいは、何度か場所を転々とした中で、ようやく落ち着いた借家で、いつのまにか30年も経ちました。

一つ屋根の下に、家族5人がひしめき合うような生活で、誰も自分の部屋などというものはなく、カーテンで仕切ったり、障子が閉められる廊下の一角を部屋代わりにするような中で、生活してきたことは、お互いに大変なこともありましたが、今振り返れば、よかったのかもしれません。

 牧師となってからも、前任地の山形県の教会では、教会の一部屋にキャスター付の机を持っていって、平日の書斎として使い、土曜の夜になると、その机をガラガラと引っ張って、隣の牧師館に戻ってくるというヤドカリのような生活をしていたことが、懐かしく思い起こされます。

 それが今は、妻と二人では持て余すほどの広い、立派な牧師館に住むことができ、日の当たる部屋で、あの同じ机を移動することもなく、わたしの物が、片付けの得意な妻の手にかかることもなく、安心して過ごせることは本当にありがたいことだと、思っています。

 ベランダに出ることができる南側においた椅子に身体を投げ出していると、ガラス越しの冬の、やわらかな日溜りに、雪深い地方では考えられないような、この房総半島の過ごしやすい地域の冬の穏やかな恩恵を、しみじみと感じるこの2月の日々です。

光は快いものである。

目に太陽を見るのは楽しいことである。

– 伝道の書11章7節 –

2011年2月号