貧しい者が富む者となるために
安井 光牧師
ハープ奏者の佐々木冬彦さんによるコンサートは、大変素晴らしい集いとなりました。佐々木さんは美しく迫力のある演奏とともに、どのようにして教会に導かれたのかをお話し下さいました。
その中では触れられませんでしたが、以前大網教会で演奏して下さった時に、佐々木さんはクリスマスにまつわる次のような思い出ばなしをお話し下さいました。
佐々木さんが教会へ行くようになったのは中学1年の時でした。その年クリスマスが近づいた頃、教会ではCSの子どもたちが降誕劇の練習をしていました。中学生の佐々木さんは舞台袖で、台詞を忘れてしまった子に台詞を教えたり、出番の済んだ子どもたちが騒がないように見張っていました。すると、出番の済んだ男の子たちが、イエスさま役(?)の人形でキャッチボールを始めたのです。あっちへホイ、こっちへホイ・・・。〝おい、やめろ!〟とすぐにやめさせたそうですが、中に舞うイエスさまの人形を見ながら、佐々木さんはふとこう思ったそうです。
神さまは、子どもたちに放り投げられて何も言うことができない、何の抵抗できない赤ちゃんになってこの世に来て下さったんだ。神さまは何でもおできになる方なのに、無力な人間となって、何にもできない赤ちゃんになって、この世にお生まれになったんだ。神さまなのに、人間にオムツを変えてもらわなければならなかったとは、本当に屈辱だっただろうな・・・。
佐々木さんは神の存在を信じていましたが、神はあまりに大きな存在で、自分の祈る小さな祈りなど聞いてくれないと思っていたそうです。でもそうではない、人となって、小さな赤ちゃんとなってこの世においで下さった神は、どんな小さな祈りでも聞いて下さる、小さな自分のことを心にかけていて下さる・・・ということを知った時に、神に対するイメージが全く変えられたそうです。この経験が、イエス・キリストを救い主と信じるきっかけとなったとお話されました。
主は富んでおられたのに、
あなたがたのために貧しくなられた。
それは、あなたがたが、
彼の貧しさによって富む者になるためである。
– コリント人への第2の手紙8章9節 –
主なる神は全知全能なる方です。主は全世界、全宇宙の支配者であり、真に富んでおられるお方です。そのお方が私たち人間のために貧しくなられたのです。本来人間のお世話をなさるお方が、人間のお世話にならなければ生きられない赤ちゃんになって来て下さった。しかも、汚い家畜小屋に生まれ、冷たい飼葉桶の中に寝かせられたのです。それは「彼(主)の貧しさによって(私たちが)富む者となるため」だったのです。
人は概して、外面的な豊かさを求めようとします。より豊かで快適な生活を求め、それを必死に得ようとします。そうする反面、内面(心)の貧しさを認めず、ひた隠しにしてしまうのではないでしょうか。
救い主イエスは、心の貧しい者を富ませて下さるのです(マタイによる福音書5章3節)。これがクリスマスの恵みです。貧しい心の中に、主イエスをお迎えしたいものです。
2013年12月号