今日一日を
野田 栄美牧師夫人
出口の見えないトンネルは、心に重く圧し掛かります。息子が生後1か月で心臓の手術を受けることになった時、手術は成功するだろうか、生きられるだろうかと、整理しきれない思いが心に溢れていました。正に、トンネルに入ってしまっていました。ある日、横断歩道を渡ろうとした時に、親に手を引かれて歩く1歳ぐらいの子が、目に入りました。「息子は、あのくらいになるまで、生きているだろうか」と、思ったのを覚えています。
先が見えない時を通るのは、辛いですね。昔どこかで、「人は大海ではなく、水たまりで溺れる」という言葉を読んだことがあります。勘違いによって、追いきれないものを負ってしまう、人の弱さを現した言葉です。
わたしたちは、今、新型コロナウイルス感染拡大の出口の見えないトンネルの中にいます。このような時だからこそ、心に留めたい言葉があります。
「だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である」。マタイによる福音書六章34節
心臓病の赤ちゃんには、厳しい水分制限があります。母乳を飲む前に体重を測り、飲んだ後にもう一度体重を測って、その差を求め、飲んだ量を毎回計測します。
これは中々大変です。満腹すれば、赤ちゃんはご機嫌になるものですが、足りないと不機嫌になるというよりは、もっと欲しいと泣きます。いつでも飲み足りないので、泣きつかれているとき以外は、泣いています。では、放っておけばいいかというと、そうもいきません。体に負担をかけてはいけないので、なるべく泣かせてはいけないのです。
その結果、母乳をやっているとき以外は、抱っこしてあやし続けることになりました。終わりのない看病に追い詰められていた時、思い付いたことがありました。10分だったら、頑張れる、とにかく10分を乗り切ろう。やっていることは同じですが、10分頑張ることはできると思いました。そして、達成感も10分後に味わえます。それを繰り返すことで、いつの間にか、息子を抱きながら、2人でぐっすり眠っていました。
今日一日で感染拡大を終息させることはできません。けれども、「イエスさま、今日、私は何をしたらよいでしょうか」と、問いかけることから一日を始めてみましょう。そして、今日するべきことを成し遂げることに心を向けましょう。乗り越える力は神が与えてくださいます。
辛い思いをしている私たちを放っておかれる神ではありません。神は、今日もあなたに喜びを与えてくださいます。一日一日を乗り越えていくうちに、神は出口まで私たちを運んでくださいます。
2020年4月号