調 和
野田 栄美
中世のイタリアの修道士であり、音楽教師であったオルティウス・ダレッツォは、「神の造った世界の調和を知るための学問の一つが音楽だ」と言いました。確かに、神の造られたこの世界は、美しい調和を見せてくれます。3年ぶりの教区バイブルキャンプで、子どもたちと海に入りました。最初は、曇っていた空に青空が見え始めると、海がきらきらと光り始め、美しい色が波の上を流れます。牧師館の台所から見える夕焼けの色は、時に得も言われぬ美しさです。暑い夏の陽が注いでいる休日に、林の中を歩いた時、木漏れ日と陽に透けた葉っぱが優しく目を休ませてくれます。
どこに行っても、神の造られた世界は調和しています。そこには、神が造られたことを喜ぶように生きている自然があります。
今、茂原教会では、11月に行われる信徒大会のための賛美リレーの練習を始めました。久しぶりの賛美の練習をすると、歌声が調和してコイノニア館に響くのが美しくて、幸せになりました。やはり、賛美の音楽は、「神の造られた世界の調和」を体験させてくれます。
コロナの感染が広がってから、私たちは共に賛美をする機会が失われていました。けれども、神を共に見上げて、皆が神のために賛美を捧げることの喜びは、私たちの中から失われてはいません。
私は、中学生の時に合唱部に入っていました。新しい曲を歌う時は、まず、それぞれのパートで練習をします。初めは、自分の音を覚えることで精一杯です。けれども、練習が進んでくると、先生はいつも「相手の声を聞きなさい」と、繰り返し指導されました。自分の歌声を正確に出すことから、違うパートの歌声を聞きながら調和するように自分のパートを歌う。それが、できるようになると、美しい合唱が生まれます。
私たちの信仰も、きっと、同じように成長するのではないでしょうか。最初は、聖書の言葉に忠実であるように、一人一人が神に向き合っています。更に進むと、自分のそばにいる人のことも思って、御言に従うようになります。それは、愛の調和を作っていきます。
主イエスは、十字架におかかりになる前に、最後の晩餐の席でこう言われました。「互いに愛し合うならば、それによってあなたがたが私の弟子であることを、皆が知るであろう。」ヨハネによる福音書13章35節
互いに愛し合うことは、目には見えないけれども、美しいハーモニーを生み出しています。教会がその調和を奏でる時、私たちが、主イエスの弟子であることを周りの人たちが知るようになります。これが神の与えた美しさであり、愛の伝道です。