今　出来ること

　 野田信行

先日、ある友人夫妻に会い、話をしました。友人は近況について、友人間だから正直に言えることと前置きをした上で、親の介護で苦労し、本当に頭に来てしまうこともあり、クリスチャンとして悩んでいるとのことでした。私は次男であったこともあり、両親の介護をすることは無しに来ました。高齢で認知症状のある実の親の世話をするのは本当に大変だと思います。

しかし自分の心には、羨ましく聞こえるものを感じました。両親との話が中々、通じ難くなった時には、苛立ちを覚えたことも懐かしい思い出です。そのような苛立ちさえも何も無くなってしまった現在にとても寂しさを感じます。苛立ちでも何でも良いので何か関りを持てるなら欲しい気持ちです。

兄に対しても全く同じ思いです。兄が母を連れて茂原に遊びに来て外食をすると、兄は一人でアルコール飲料の注文を繰り返し上機嫌でいました。

私の妹は兄に将来、何か迷惑を掛けられるのではないかと心配していました。私は口に出すことはしませんでしたが、正直な気持ちは妹を全く同じでした。しかしそのような兄は本当にあっけなくこの世からいなくなってしまいました。兄の死が私の心に、これほどの大きなダメージを与えるとは全く想像もしていませんでした。

自分の好き勝手に自由に生きて来た兄のことを生前に考えることは余りありませんでした。しかし私にとっては、唯一の実の男の兄弟でした。兄がこの世からいなくなってから、横須賀に帰っては兄と共に過ごした場所を訪ねました。兄のアルバムを見返し、幼い時から一緒に過ごしたこと等を思い返しては泣き続けました。兄に健康診断を受けるように勧められなかったことを含め、兄に対する思い遣りが足りなかったことが心残りです。

朝ドラの主題歌になったAIのアルデバランの歌詞に、

「君と私は仲良くなれるかな　この世界が終わるその前に　きっといつか儚く枯れる花　今　私の出来うる全てを」とあります。

「天の下では、すべてに時機があり、すべての出来事に時がある」（コヘレトの言葉３：１）

その時でなければ出来ないことがあります。あの人にあの時にこうしておけば良かったという後悔はしたくないものです。出来ることならすべての人と仲の良い花を咲かせたいものです。そのためには、今は何が出来る時であるのか御心を求めて歩ませていただきたいものです。