「悪を取り除く」

2023年4月30日礼拝説教  
申命記 12章29節~13章6節

        

主の御名を賛美します。米国は一応はキリスト教国として大統領の宣誓式では聖書に手を置いて宣誓を行いますが、元大統領のレーガンは奥さんのナンシーが嵌っていた占星術の影響を強く受けていたと言われます。

前大統領のトランプはカルトである新使徒運動の自称使徒と名乗るポーラ・ホワイトを宗教顧問のトップに据えて頼っていたと言われます。米国の大統領もそのようなものに頼りたいと思うようです。

1、罠に陥らないように

イスラエルはこれから主が与えると約束されたカナンの地を所有して住むようになります。しかしそこは他の人が誰も住んでいなかった空き地ではありません。イスラエルの先祖が38年前に恐れた巨人の諸国民が住んでいますので、追い払う必要があります。その手順はどのようなものでしょうか。

まず主がイスラエルの前から諸国民を滅ぼします。29節と30節で2回言われて強調されています。イスラエルにとって先住の諸国民は巨人で恐ろしく感じるかも知れません。しかし何も恐れる必要はありません。なぜなら、「しかし今日、あなたの神、主があなたに先立って渡り、焼き尽くす火となり、彼らを滅ぼし、あなたの前に屈服させてくださることを知りなさい。」(9:3)とありました通りです。

諸国民を滅ぼされるのは主であって、イスラエルではありません。これは人間の戦いではなく、主の戦いです。このことは現代においても同じです。主の御心を求めて祈り、聖霊が「進みなさい」と命じられるなら、何も恐れることはなく、ただ主の命令に従って進むだけです。

主の目に適う良いこと、正しいことを行うなら、主にある幸せは約束されています(28節)。主が悪を取り除いてくださるのですから、私たちは主の命令に従って進むだけです。ただここで勘違いをしないように気をつける必要があります。

それは続きの9:4にありました通りに、「あなたの神、主があなたの前から彼らを追い出されるとき、『私が正しいから、主が私を導いてこの地を所有させてくださった』と考えてはならない。むしろ、この諸国民が悪かったから、主はあなたの前から彼らを追い払われるの」です。

イスラエルが悪くなれば、諸国民と同じように追い払われることになります。私たちは自分に敵対する者が主に追い出されて、ひと安心するような一見、順調に見える上り坂の時にこそ注意が必要です。大変な状況の時には必死に主により頼みますので、他のことに目を向けて気を取られている余裕等はありません。

しかし、順調な上り坂の時には心に隙が出来易いものです。上り坂の先にある、真坂という罠に陥らないように気をつける必要があります。罠とはどのようなものなのでしょうか。先住の諸国民の神々を尋ね求め、「これらの国民は彼らの神々にどのように仕えたのだろう。私も同じようにしよう」などということを考えることです。

このようなことは、ある程度の時間や心等に余裕のある人でなければ出来ないことです。高齢者を対象とした詐欺等は、高齢者になると判断力が衰える部分を狙っている部分もありますが、時間を持て余している人の心の隙を狙う本当に卑劣で悪質な犯罪です。

現代は情報化社会で簡単に色々な情報が手に入ることは本当に便利なことです。しかし多くの情報が溢れているので何とか人々の関心を引くために好奇心に訴える等の色々な工夫がされています。しかしそれと共に人の欲に訴えるような色々な罠も多く仕掛けられていますので気をつける必要があります。

2、付け加えたり減らしたりしてはならない

諸国民は、主が憎まれるあらゆる忌むべきことを自分たちの神々に行いました。詳しくは18章で出て来ますが、ここでは具体的には息子や娘をも神々のために火で焼きました。主はモーセを通して命じる言葉を、すべて守り行い、それに付け加えたり減らしたりしてはならないと言われます。

主は献げ物をはっきりと命じておられますが、息子や娘を焼けとは命じられません。主が命じておられないものに付け加えてはならないものです。諸国民はなぜこのようなことを行ったのでしょうか。人間的な理屈としては想像することが出来ます。息子や娘は誰にとっても大切なものです。

自分はそのような大切なものを献げるのだから、それと引き換えにそれ以上の見返りがあることを期待するのでしょう。しかしそれは、自分が正しいと見なすこと(8節)であって、主の目に適う良いこと、正しいことではありません。主は人間と同じレベルのギブアンドテイクの取引をされるお方ではなく、一方的な恵みとして与えてくださるお方です。

主が命じておられない献げ物を付け加えたり、命じておられるものを減らすことは、現代においては献げ物を献げる礼拝についてのことと言えます。神を礼拝する礼拝において、神が命じておられない自分が正しいと見なすことを付け加えたり、減らすことはしてはならないことです。

3、預言者や夢占いをする者

「あなたの中に預言者や夢占いをする者が現れ、しるしや奇跡を示」すと言います。「預言者や夢占い」が3回使われて強調されていますので、深刻な問題であったようです。預言者や夢占いは、具体的にはどのような内容の預言や夢占いをしていたのだろうかと考えます。

具体的なことは書かれていないので分かりません。しかし預言や夢占いの内容がどうでも良い、関心の無いことであったら誰も関心を持たないでしょう。そうするとその内容は恐らく多くの人が関心を持つことであると思われます。

「夢占い」は新改訳では「夢見る者」と訳されていて、元祖「夢見る者」(創世記37:19)と言えばヤコブの12人の息子の一人のヨセフです。ヨセフは色々な夢の解き明かしをしましたが、最大のものはエジプトの王ファラオの見た夢を、7年の大豊作と7年の飢饉であると解き明かしたことです(創世記41:1~36)。

この当時に豊作となるか飢饉になるかは自分たちの命にも関わる最も重大なことでした。そしてもしも飢饉が預言されるなら、飢饉を逃れるためにはどうしたら解決出来るのかということになります。文章の流れから考えると、飢饉を逃れるためには息子や娘を諸国民の神々のために火で焼けと預言する預言者や夢占いがいたと考えられます。

創世記のヨセフの夢の解き明かしは神からの知恵に与った本物です。しかし、ここで言われる預言者や夢占いは、主から預かった言葉を語るのではなく、自分が正しいと見なすことを主から示された預言として告げたり、偶像礼拝を行う偽物です。しかし質の悪いことに、偽物の預言者や夢占いには悪い霊が働いて、その者が告げたしるしや奇跡が実現することがあります。

そうすると偽物の預言者や夢占いをする者は自信満々に、「さあ、あなたの知らない他の神々に従い、仕えようではないか」と言って来ます。現代のこの世も、そのような偶像礼拝への誘いの声に満ちています。それに対して現代人はどのように対応をしているでしょうか。

現代は一見すると、科学や人間の理性が絶対的になっている科学万能主義ようにも見えます。しかしそれが返って仇となって、科学や人間の理性では理解出来ない、しるしや奇跡ようなものを目の当たりにすると、簡単にそれに捕らえられてしまう弱さがあります。

主はそのことを良くご存じですので、「預言者や夢占いをする者の言葉に耳を貸してはならない。」と命じられます。カルト的な宗教が話題になる時には、良く信者の中に高学歴な人や社会的地位の高い人がいることがあり、どうしてこのような人たちがということが言われます。

それは、この世の知識が豊富な人は好奇心も強い人が多いようですが、霊的な世界には疎い部分があるようです。しかしそうは言っても、誰でも超自然現象的なものを見たりすると心が揺れたりして、これは本物なのではないかと思ったりし易いものです。

主は人間がそのようなものを見ると騙され易いことをご存じでありながら、なぜそのような状況を許されておられるのでしょうか。その目的は何でしょうか。それは、あなたがたの神、主はあなたがたを試しておられ、そして知ろうとされているからです。

何を試しておられるかと言いますと、「あなたがたが心を尽くし、魂を尽くしてあなたがたの神、主を愛するかどうかを」です。これは主イエスが最も重要な戒めと言われたものです(マタイ22:37)。私たちが心を尽くし、魂を尽くして私たちの神、主を愛するなら、主の命令を守り、預言者や夢占いをする者の言葉に耳を貸しませんので、罠に陥ることはありません。

「あなたがたの神、主に従って歩み、主を畏れ、その戒めを守り、その声を聞いて、主に仕え、主に付き従わなければならない。」のです。要するに胡散臭いものには関わるなということです。「君子危うきに近寄らず」が神の知恵です。

4、贖われた民

イスラエルは神、主によって奴隷の地エジプトから導き出されて救われました。イスラエルはただでエジプトから救われたのではありません。贖いが必要でした。贖いは代価を支払って買い取ることです。小羊の血を代価として家の入り口の二本の柱と鴨居に塗ることによって、イスラエルの家を主が過ぎ越され救われました。

これは現代のクリスチャンにとって、エジプトが象徴する罪の奴隷から贖い出される救いを意味します。主の過越と同じ日に主イエスは過越の小羊となって十字架で血を流されて代価を払われ、クリスチャンは贖い出されました。クリスチャンは主イエスの尊い血の命に生かされている者です。

しかし預言者や夢占いをする者は、私たちを救ってくださる神、主に背くように語り、主が歩むように命じられた道から外れるように仕向けます。そのような者がイスラエルの中に現れるということは、現代で言えば教会の中に現れるということです。

元祖「夢見る者」のヨセフの夢の解き明かしには、献酌官と料理長の夢もありました(創世記40:1~23)。牢獄で二人と一緒になったヨセフは、献酌官は三日のうちに元の仕事に戻りますが、料理長は三日のうちに木に掛けられることを、主の知恵によって解き明かします。

人間は理性では知り得ないことを知りたいと願うものです。そこに偽預言者や夢占いをする者の活躍する大きな余地が生まれます。現代でも一般的なこととして、恋愛占いを含めた人生相談の占いは繁盛するようです。誰でも自分の将来を知ることが出来るなら、どうしたら良いかを知りたいと思うものです。

そしてこのようなことは教会の中でも起こります。自分が正しいと見なすことを主に示されたと語る

偽預言者は現代にも多くいます。個人的にはこのような偽預言者とは関わりたくはないと思いますが、職務上どうしても関わらざるを得ないことがあります。

そのような人の話を本人や周りの人から聞くと、不幸にも幼い時に不遇の時を過ごした経験を持つ人ばかりです。その反動からか、自分は特別な存在として認められたいという承認欲求を強く持ちます。不遇の体験というのは多かれ少なかれ誰にでもあるものです。

しかし神に出会い、神の愛を本当に知ると、移ろい易い人に認められること等は求めなくなるものです。しかし偽預言者は見えない神ではなく、この世の見えるものに捕らわれています。このような人は本当に神に出会ってはおらず、ただ宗教を利用して自分が認められることをしているだけのようです。

そして自分が特別な存在と人に認められるために、普通の教会では関わらないものに強い関心を持ちます。怪しげな本、動画、ネットの情報を熱心に見たり、集会に参加したりします。元々、聖書のことも良く知りませんので簡単にその罠に陥ってしまいます。飛んで火にいる夏の虫です。

そしてそのような、怪しげな本を他の人にも勧め、動画やネットの情報を拡散させ、集会に誘ったりします。本人は今迄に教会で聞いたことのない新しい情報と思うかも知れませんが、今迄に聞いたことのないものと思うのは、基本的には聖書が教えていない偽の話だからです。

そして他の人にも教えてあげるという一見すると善意の行動にようにも見えますが、それは主の道から外れるように仕向けるサタンのための働きです。もしも本当に良い物だと思うなら正式に教会の承認を受けて堂々と行えば良いのですが、到底そのようなことの出来る代物ではありません。

これはⅡテモテ4:3、4で預言されていることで、「誰も健全な教えを聞こうとしない時が来ます。その時、人々は耳触りのよい話を聞こうと、好き勝手に教師たちを寄せ集め、真理から耳を背け、作り話へとそれて行くようになります。」 皆さんもそのようなものには、ぜひご注意をいただきたいと思います。もし何かありましたらお気軽にご相談ください。

5、悪を取り除く

主イエスが十字架で血を流されて贖い出された神の民に対して、主に背くように語り、主が歩むように命じられた道から外れるように仕向ける者は、死ななければなりません。そしてその死によって、「あなたの中から悪を取り除きなさい」と命じられます。

このような文章を見ると、私たちは悪を取り除くために死ななければならいのは誰のことだろうかと思います。しかし聖書はそれは誰かといった他人のことを書いているものではありません。「あなたの中から悪を取り除きなさい」という文章は2人称の単数形で書かれていますので、一人一人のあなたが、「あなたの中から悪を取り除きなさい」という命令です。

また「悪を取り除きなさい」の原語の意味は、「悪を焼き尽くせ」です。火で焼くべきは息子や娘ではなく、あなたの中にある悪です。火は神、聖霊を表しますので、聖霊によって私たちの中にある、偽預言や夢占い等を思う悪を焼き尽くしていただきましょう。

6、祈り

ご在天なる父なる神様、御名を崇めます。私たち人間は、初めの人であるエバがしたように、あなたの言葉に付け加えたり減らしたりしてしまう愚かな存在です。しかしあなたは私たちに、「あなたの中から悪を取り除きなさい。」と命じられます。

そして主イエスを信じる者には、主イエスの十字架の贖いによって私たちの悪を取り除いてくださり、更に聖霊の力によって悪を取り除き続けてくださいますから有難うございます。私たちが悪の罠に陥ることなく主に従い続けることが出来ますようにお守りください。主イエスキリストの御名によってお祈りいたします。アーメン。